2009 Fiscal Year Annual Research Report
リーウィウスとローマ共和政期における伝承および歴史記述の研究
Project/Area Number |
19520632
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
毛利 晶 Kobe University, 人文学研究科, 教授 (60174330)
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Keywords | 西洋古代史 / 西洋古典学 / 考古学 |
Research Abstract |
本研究の目的および今年度の研究実施計画に従って、以下の活動を行った。これらは直ちに新たた知見をもたらすものではなかったが、本年度の研究と集めた資料に基づき、来年度は更に研究を深化させて行く。 1.ローマで初めて散文による本格的な歴史記述を行ったファビウス・ピクトル(前3世紀後半~2世紀初頭)と、リーウィウスに残るファビウス氏の家伝について考察した。ファビウス・ピクトルの歴史は僅かな断片を残して散逸してしまったため、その構成、ファビウス・ピクトルの執筆意図、彼が利用した資料、彼の歴史書のローマ史学史上の位置づけを巡って様々な議論が存在する。そこで近年の研究を中心に、これらの議論を整理した。またリーウィウスが第1デカーデ(第1~10巻)で伝えるファビウス一族の活躍を比較検討し、前4世紀の半ば以降、質量ともに伝承の変化を想定しうることを確認した。 2.2009年9月4日から16日までミュンヘン(ドイツ)とローマ(イタリア)に滞在し、資料の収集と調査を行った。ミュンヘンではバイエルン国立図書館で発掘報告とローマ共和政期の史学史に関する研究を中心に、日本では入手が困難な文献を閲覧・コピーした。ローマでは、平行して行っている共同研究(基盤研究(B)「古代ローマ都市オスティア・アンティカの総合的研究」研究代表者:坂口明(日本大学))のオスティア・アンティカにおける現地調査に従事すると共に、カピトリウム博物館とローマ国立博物館においてファスティ(暦・政務官表)などローマ史学史研究で重要な碑文の調査を行った。 3.本研究にとって基本史料の一つであるリーウィウスの第2ペンターデ(第6~10巻)の完訳を目指しているが、昨年度に前半部分を『ローマ建国以来の歴史3』(京都大学学術出版会)として出版したので、今年度は後半部分を、2011年度中に完成させることを目途に翻訳作業を進めた。
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