2010 Fiscal Year Annual Research Report
リーウィウスとローマ共和政期における伝承および歴史記述の研究
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19520632
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
毛利 晶 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (60174330)
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Keywords | 西洋古代史 / 西洋古典学 / 考古学 |
Research Abstract |
本研究の目的および今年度の実施計画に従って、以下の研究を行った。 1.ローマの年代記に伝わる共和政期の伝説から、カミッルス伝説(エトルリア人都市ウェイイの奪取、ガッリア人に占拠されたローマの解放)とコルネリウス・コッススの決闘伝説(スポリア・オピーマの奉納)を取り上げ、それぞれの伝説が共和政宋期の政争(特にカエサルの独裁を巡る争い)およびアウグストゥスの時代の政治文化(元首政のイデオロギー的基盤の形成)のなかでどのように利用され、その中で伝説自体がどう変化したかを史料に基づいて考察し、これらの問題に関する最近の欧米の研究を検証した。 2.共和政期のローマで初めて本格的な歴史記述を行い、前3世紀末までのローマ史の枠組みを作ったと考えられているファビウス・ビクトルに関して、彼の執筆意図と彼が利用した資料に関して、ファビウスの歴史を利用した前2世紀の歴史家ポリュビオスの著書を史料として考察し、また過去3年の間に集めた研究文献を検討した。 3.9月1日から13日までローマのドイツ考古学研究所図書館とヴィラ・ジュリア国立エトルスキ博物館を中心に、カミッルス伝説成立の背景となった前4世紀初頭を中心とするローマ共和政史の文献の収集と、ウェイイなど南エトルリアの諸都市で出土した考古学資料の実見調査を行った。また共和政期の伝承と歴史記述を研究する上で基礎となるファスティ(政務官表・カレンダー)に関しても、昨年度の調査に続けて今年度はアンツィオ(アンティウム)出土の断片を調べ、実見で得られた観察結果をInscriptiones Italiaeの第13巻と照合する作業を行った。 4.本研究と関連して取り組んでいるリーウィウス著『ローマ建国以来の歴史』の第2ペンターデ(第6~10巻)の翻訳作業は、第9巻を終えて第10巻に入った。当初の予定よりは遅れ気味だが、来年度はピッチをあげて年度内の完成を目指す。
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Research Products
(1 results)