2010 Fiscal Year Annual Research Report
碑文学・図像学的見地からみた古代ギリシアの外交ー儀礼としての外交構築
Project/Area Number |
19520642
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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Keywords | 古代ギリシア / 碑文 / モニュメント / 外交 / アクロポリス / 奉納碑 / 顕彰碑 / デロス同盟 |
Research Abstract |
平成22年度は、5月にアテネで開催されたシンポジウムThe Athenian Empire:Old and New Problemsにおいて、'Three Mysterious Inscriptions Concerning Erythrai:IG I<3>14,15 and 16'を報告した。修正加筆した論文は、シンポジウムをもとに編纂される論文集に掲載される予定である。上記報告は、エリュトライに関するデロス同盟期のアテナイの決議碑文を扱ったものであるが、碑文の成立年代を再考するとともに、決議碑文をアクロポリスに建立するという習慣が,どのような経緯でいつごろ成立したのかというより大きな問題提起もおこなった。本問題について正面から取り組んだのが、「決議碑文の建立の場としてのアクロポリスの成立」である。ここでは、アテナイおよびアッティカにおける碑文建立習慣の推移について、その内容および建立場所から考察し、決議碑文を建立するという習慣が生まれた背景として、アクロポリス再建事業におけるパルテノン神殿の落成が一つの画期となったであろうこと、もっとも重要なデロス同盟国の一つであったサモスの反乱の事後処理に関する決議を碑文に刻み建立するという決定が、その後の決議碑文の建立への道筋を開いたのではないかということを論じた。聖法(lexsacra)、聖域に関わる取り決めの記録、聖財に関わる記録の建立が普及する時期と民会決議碑文が建立されるようになる時期との間には乖離があるのではないかという新たなる見解を得ることにもなった。 8月にはリキア地方のトロスでの発掘に参加し、碑文を通時的に見ることの必要性を再認識する機会を得た。この発掘で発見された碑文については「2010年度発掘調査によるトロス教会聖堂出土碑文の概要」(『史苑』所収)に発表した。
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Research Products
(3 results)