2008 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀スイスのカトリシズムと民衆文化に関する社会史的研究
Project/Area Number |
19520644
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
踊 共二 Musashi University, 人文学部, 教授 (20201999)
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Keywords | 近世史 / スイス / ドイツ / 宗教改革 / 宗派化 / 民衆文化 / 社会的規律化 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に集めた一次資料、専門書、関連図書をもとに、またチューリヒ大学図書館等での調査と現地調査(ルツェルン地方)の成果をもとに、近世スイスの山岳地帯の魔術や占いの実態、侏儒(こびと)や竜(ドラゴン)の伝承、死者の軍勢や亡霊の信仰の伝承などについて資料分析を中心とした研究を行い、2008年6月に『武蔵大学総合研究所紀要』に発表した。おもな資料はスイス民俗学の父と呼ばれるレンヴァルト・ツィザートおよびその子孫が残した大量の民俗誌であるが、これらの資料を近世ヨーロッパ社会史・民衆文化論に有機的に組み入れた研究は従来は行われていない。 2008年5月には日本西洋史学会大会(於:島根大学)のシンポジウム(気候と歴史)にコメンテーターとして参加し、口頭にて本研究の成果の一部について言及した。その内容は、スイスの山岳地帯に根強く残っていた水源信仰や好天・豊作を祈る呪術、寒冷化と不作が確認される17世紀に起こった魔女迫害などである。また2008年11月には日本女子大学文学部・文学研究科主催のシンポジウムに発表者として参加し、近世スイスを発生源とする宗教改革急進派(再洗礼派)の誕生と宗派化の諸相について述べ、2009年5月刊行の論文集にその原稿を掲載したが、そこでは、現実社会からの分離を志向する再洗礼派と近世の民衆世界・民衆文化との対決の諸相にも論及している。なお2008年5月には山川出版社の歴史教育雑誌『歴史と地理(世界史の研究)』にも本研究の内容に関連する文章を掲載した。
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Research Products
(4 results)