2010 Fiscal Year Annual Research Report
弥生時代集落の広さと居住人口復元に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19520654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 淳史 京都大学, 文化財総合研究センター, 助教 (70252400)
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Keywords | 弥生時代 / 集落 / 遺跡情報 |
Research Abstract |
これまで継続収集してきた西日本の弥生時代遺跡情報のうち、近畿北部の日本海側(但馬・丹後・北~中丹波・若狭)地域について、日本海岸で最東端となる遠賀川式多量出土遺跡である小浜市丸山河床遺跡の未報告資料を報告し、あわせて弥生前期前後を中心とする遺跡の詳細情報を収集検討した。結果、丸山河床遺跡は山陰地方と同特徴の遠賀川式土器を多く含み、若狭湾岸への弥生文化伝播が日本海側の系譜によることが明確となった。同時に、微量の突帯文土器資料が存在することがわかり、別系譜の土器群の併存可能性も指摘された。従来若狭湾岸の弥生前期の状況ははっきりしておらず、その具体的内容と系譜がはっきりしたことの意義は、北陸~東北地方の日本海側への弥生文化の伝播を検討するうえで大きいといえる。遺跡情報の検討では、近畿北部の遠賀川式土器出土遺跡は沿岸部に、突帯文土器出土遺跡は内陸部にやや偏る傾向がみとめられること、前期新段階に遺跡数としてかなり増加するが、中期以降の継続性には乏しい、といった状況が明らかになった。近畿北部において、縄文晩期末の突帯文土器から弥生前期の遠賀川式土器への変化を、出土遺跡の動向も含めて包括的に示した研究は少なく、今後の社会動態を検討するうえでの基礎情報として活用が期待できる。これらの結果は、成果報告の出版物として冊子を刊行した。残念ながら近畿北部の弥生前半期には、住居や墓地など遺跡内容が判明している事例が極めて乏しく、集落規模や人口動態といった本研究課題の最終目標に到達するには至らなかった。この点は今後の課題である。ただし、考古資料からの集落・人口動態の研究をおこなう先行例を集積することが出来ているので、その吟味と、昨年度までに蓄積できている近畿内陸部の遺跡情報を用いたシミュレーション試行結果とあわせて、別途機会を設けて公表したいと考えている。
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