Research Abstract |
快適で魅力のあるサービス空間の形成に関する都市地理学的研究を実施するために,ヘルシンキ,ストックホルム,コペンハーゲン,シドニー,シンガポールを訪れ,都市空間の実態調査を行った。北欧の3都市では,都心部とその周辺にデザインを重視した歴史的建造物が数多く存在しており,市民や旅行者にとって魅力的な空間になっていることがよくわかった。シドニーでは港湾地区を中心にパブリック・スペースがよく整備されており,多くの観光客を魅了する空間構成になっている。シンガポールは多民族からなる都市国家らしく,多様な文化的要素を組み合わせた都市施設が各所に建設されており,これも多くの人びとを惹きつける空間として評価できる。5つの都市のいずれも,観光的要素が重視された都市構造をなしており,サービス経済化した現代都市に共通する性格が感じられた。ただし,それぞれの都市は歴史,文化,風土が違っており,魅力ある都市空間が形成されてきた背景も異なる。こうした違いがあるにもかかわらず共通性があるのは,グローバル化した現代都市においては,人びとを幸せな気分に導く演出が国が違っても似てくることの表れだと思われる。都市空間の構築に深く関わる為政者,行政マン,都市プランナー,企業経営者などが,それぞれの都市においていかなる思想,理念,計画をもって空間構造の形成に取り組んだかが,次年度に課せられた研究課題である。
|