2009 Fiscal Year Annual Research Report
移動行動パターンと人口集積核の形成過程に関する動態的運動モデルの構築
Project/Area Number |
19520673
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 和子 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (50155115)
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Keywords | 人口移動 / 距離 / 年齢 / 性差 / 重力モデル / ランダム性 / 福井市 / オーストラリア |
Research Abstract |
平成21年度は、(1)平成19年度に収集したオーストラリアの人口移動センサス・データの整理・点検とデータ・ファイル作成ならびに分析単位地区の地図データ・ファイル作成を行い、基礎的な空間分析を継続した。また、(2)福井市の非集計人口移動データを用いた距離分析と論文作成を行った:福井市の住民異動届データ(1998~2001年度)を用いて、地域間移動(市域を越える転入・転出)と市域内移動(転居)について、男女別、年齢別の移動距離を分析した。移動距離は、年齢により変動すること、この変動のパターンは、地域間移動と都市内移動という移動の空間的範囲の広狭によって、また、男性と女性でも異なることが明らかになった。この変動パターンの生成要因を明らかにするために、重力モデルから、ランダム効果、距離減衰効果、人口規模効果、重力効果を取り出して説明変数とし、移動距離の頻度分布について回帰分析を行った。その結果、重力効果の説明力が常に高いわけではないこと、ランダム効果や距離減衰効果、人口規模効果といった重力モデルの個々の構成要素の影響力は、移動タイプ(転入、転出、転居)によって異なること、また、年齢の進行に従って影響の強さが変動するし、男女差も明瞭にあることが明らかになろた。ランダム効果の説明力は総じて弱いが、これが強く作用するようなタイプの移動も存在した。また、地域間移動(転入・転出)と市内移動(転居)の距離を比較すると、空間的スケールが大きく異なる移動では、行動論理が異なることが伺えた。こうした人口移動距離の分析は、距離に着目した稀少な研究事例であるだけでなく、重力モデルの意味を問い直すという意義をも有する。
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