2007 Fiscal Year Annual Research Report
古墳文化の地域性に関する地理学的研究-九州と近畿を中心に-
Project/Area Number |
19520674
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
出田 和久 Nara Women's University, 文学部, 教授 (40128335)
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Keywords | 前方後円墳 / 考古地理学 / 歴史地理学 / 九州 / 地域性 / 近畿 / 分布 / GIS |
Research Abstract |
本研究は、歴史地理学の立場から日本の古代国家が成立する直前の時期である古墳時代の九州地方を主たる対象地域として、古墳文化の受容のありようとその地域的な差を、近畿地方(特に後の畿内)とも比較しつつ探ることを通じて、それぞれの地域性にアプローチしようとするものである。今年度は、内部構造(主に石室の構造)・内部主体(主に石棺の種類と構造)・副葬品等に関する主要データを収集整理し、九州前方後円墳データベースを作成するとともに、九州では前方後円墳が比較的集中している福岡県と宮崎県を中心に、また九州と比較対照するために近畿地方では摂津および播磨西部において現地調査を実施し、主要前方後円墳の立地と現況について把握した。その結果、例えば豊前地域では海岸平野立地するタイプと海岸から離れた山麓部周辺に立地するものとに大別できることをはじめ、立地上の差異が地域的にも見られそうであることが注目された。 また、作成したDBをもとにGISを利用して、地域的な特色や傾向について詳細に分析検討するために、抽出した前方後円墳に関する主要な要素ごとの分布図を試作した。ほかに、地形図と空中写真をおよび現地調査で撮影した現況写真による「九州主要前方後円墳の現況」データベースの作成について検討した。 前方後円墳の分布と規模に注目すると、西都原古墳群を中心とする日向中央部地域(宮崎県中部)における分布密度と個々の前方後円墳の規模が小さいことが改めて注意された。必ずしも古墳内部の調査が十分なされているとは言えず、造営時期等に不明確な点が多く明言できないが、これらの特徴は、所謂「前方後円墳体制」として捉えることが必ずしも適切ではないことを示唆している。
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