2009 Fiscal Year Annual Research Report
古墳文化の地域性に関する地理学的研究―九州と近畿を中心に―
Project/Area Number |
19520674
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
出田 和久 Nara Women's University, 文学部, 教授 (40128335)
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Keywords | 前方後円墳 / 歴史地理学 / 九州 / 近畿 / 地域性 / データベース / GIS / 考古地理学 |
Research Abstract |
本年度は、近畿地方に続いて九州地方についてArcGISを利用した前方後円墳(以下、古墳と略記)のデータベースをほぼ完成させた。現地調査の成果を生かして若干のデータの修正・補完を行うとともに古墳の位置の誤り等も修正した。本データベースにより試行的に分析を行い、九州地方における古墳の分布に関して以下のような興味深い知見を得た。(1) 古墳の築造時期と規模・数をみると、3期から5期に大型化が認められ、6期には100m超の大型の割合が半減し、以降50m未満の割合が増加する小型化の傾向が窺える。また、100m超の大規模な古墳は全体の5%にとどまり、近畿の約16%と大差がある。(2) 代表的な威信財の副葬品である青銅鏡の分布を見ると、九州地方では三角縁神獣鏡は舶載、〓製ともに前期古墳からの出土に限られるが、画文帯神獣鏡は多くが中期後半から後期前半の限られた時期の古墳から出土するという相違が見られ、より高次の威信財的様相を見せる近畿地方とは様相を異にする。(3) 馬具類を副葬する古墳は北部九州に偏在し、後期古墳が8割を占める。(4) 箱形(箱式)石棺は前期古墳が過半数を占め、後期古墳は1割に満たない。地域的には3分の1が豊後に、2割が筑前西部に集中している。(5) 古墳の集中地域である福岡県域と宮崎県域を比べると50m未満の割合が59%と44%でかなりの差があり、いわゆる前方後円墳体制における古墳の規模の階層性は一様ではないことが推定される。(6) 1期の古墳は低丘陵ないし段丘上に立地するものが多数を占め、2期になると相対的に比高が高い丘陵上への立地が多くなり、3期になると平野面への立地がみられ立地の多様化傾向がみられる。また、現地調査の結果から、前方後円墳は地域の可視的歴史遺産としては分かり易いためか、規模が大きいものは比較的保存状況は良好で、墳長が50m以上のものでは墳丘が整備されたものが相対的に多いことが指摘できる。
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