2008 Fiscal Year Annual Research Report
北欧における持続的発展へむけた地域政策による地域構造の変動と政策評価に関する研究
Project/Area Number |
19520680
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 潤 Kyushu University, 比較社会文化研究院, 准教授 (90284562)
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Keywords | 持続可能性 / 地域政策 / 地域構造 / 環境負荷 / 温室効果ガス / 気候変動枠組み条約 / 道路課金・課税 / 経済的手法 |
Research Abstract |
本研究では、持続的発展をめざした各種の地域政策が実施されている欧州諸国を対象に、従来の研究であまり取り上げられなかった地域政策による地域構造の変動を明らかにするとともに、この変動をもとに地域政策を評価することを研究目的とした。平成20年度はノルウェーを対象地域とした交通政策(ロードプライシング)によるフロー面での変化を中心に調査した。すなわちオスロ都市圏とホーダランド県で現地調査を実施し、ロードプライシングに関するデータ(徴収ゲートの通過車両数や圏域での流動に関するOD行列データ等)ならびに関連資料を収集した上で、各地点間の交通流動量の変化を定量的に把握した。他方GISを用いてこれらのデータを解析するため、これらデータと並行して、GISの基礎データも収集した。 オスロ都市圏を対象とした研究成果の一部を全国学会で発表するとともに刊行している。オスロ都市圏を事例として、1990年に導入された道路課金制度や都市構造の変化がCO_2排出で代表される環境負荷の軽減に寄与するかを検討した。その結果、道路課金による環境負荷軽減への影響がほとんどなかったことを明らかにした。このことは、スウェーデンの渋滞税制度で用いられているピーク時での差別的な課税とは異なり、一日を通じて定額が課金されている点と関係しているといえる。また都市構造の変化と環境負荷の軽減の関係に関しては、2000-2005年間でコミューン間の輸送費が増加することにより、CO_2排出量が増加していることが観察され、それを、中心市であるオスロ市への一極集中化にあることを指摘した。このように、従来の研究で示されなかった、地域政策による、フローの側面での地域構造の変化とそれによる環境負荷への影響を実証的に明らかにしたという点で本研究の学術的な意義があるといえる。
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