Research Abstract |
本研究の目的は,ドメスティック・スペース(domestic space,家庭空間),「ホーム」なる空間を,文化地理学的視角から再検討することにある。 本年度は,(1)ホームをめぐる文化地理学的研究の理論的・方法論的検討,(2)博物館などにおける「ホーム」の表現についての事例研究,(3)学会等における成果発表,を柱に研究を行った。 (1)については,英語圏の文化地理学においてここ10年ほどの間に急速に高まってきた「ホーム」をめぐる研究について,レビューを行った。その際,まだ予察的な段階ではあるが,マテリアリティなど表象を超えようとする研究動向についての理論的検討も行った。その成果は,レフリーとのやり取りをへて,学会誌『人文地理』で公表した。ドメスティック・スペースやホームに関する研究が,日本の地理学においてほとんど行われてきていないことを鑑みると,地理学研究の新たな領域を模索するレビュー論文として位置づけられよう。 (2)については,昨年度に引き続き現地調査を行い,暫定的な成果として,「ホーム」なる空間が家庭の外に再現されていることの政治性などについて,市民向け講座(大阪府立大学女性学研究センター)で報告した。(3)については,ドメスティック・スペースより空間的スケールは大きくなるが,風景・ホームと政策にかかわる発表をEARCAG(12月,ソウル)で発表した。 当初の予定より,事例研究の蓄積が若干遅れ気味であるが,その分,文化地理学の最近の理論をめぐる検討に力をさいた。消費される現実に関する論考については,次年度の課題としたい。
|