2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本社会におけるドメスティック・スペースの再現とその政治性
Project/Area Number |
19520683
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
福田 珠己 Osaka Prefecture University, 人間社会学部, 准教授 (80285311)
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Keywords | ホーム / 家庭空間 / 博物館 / 文化地理学 / マテリアリティ / パフォーマティヴィティ |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は、(1)社会的政治的な存在としての「ホーム」という理解を地理学研究の潮流の中で整理・展望すること、(2)近年の文化地理学における「ホーム」の研究が部分的に依拠している非表象理論についてその有用性を検討すること、(3)家庭的なる空間配置・意味の生成が、「家庭」の枠を超えて再生され消費され経験されている諸現象を解釈すること、を目的としていた。 1年をへて、ホーム、博物館展示、マテリアリティやパフォーマティヴィティにシフトする文化地理学研究の潮流を包括するような研究を実施することができた。ただし、本研究課題に着手した当初(平成19年)は、具体的な事例研究を主とした成果をあげることを目指していたが、その後Visuality/Materialityという研究会の開催(2009年7月)が知らされ、上記目的のうち、(1)(2)に特化した研究を実施することとなった。なぜなら、この研究会は、申請者が注目する英国の文化地理学者G. RoseとD. Toha-Kellyによって組織化された単発的な学際的研究会であり、本研究テーマを深化させていくうえで、不可欠な機会だと判断したからである。 具体的には、博物館空間、ホームなる空間(ドメスティック・スペースから故郷に至る空間)に関する考察と、近年の英語圏文化地理学における諸議論を交差させるという点において、一定の成果をあげることができた。地理思想の潮流については簡単な展望を行い(『人文地理』)、また、ホームと博物館展示を語る上で欠かすことのできない「感情」への傾倒についての具体的論考についてVisuality/Materialityiにおいて発表し、ホームの展示をめぐる歴史的プロセスについては、棚橋源太郎に焦点をあてた研究を14th International Conference of Historical Geographerにおいて発表し、博物館空間と地理思想との接点についても日本地理学会において概観発表した。とりわけ、Visuality/Materialityにおける発表は、地理学のみならず、メディア研究、博物館研究など地理学以外の研究者から関心を寄せられ、有意義な議論を展開することができた。
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