2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520690
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
千田 稔 International Research Center for Japanese Studies, 研究部, 教授 (20079403)
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Keywords | 絵図 / 地図 / 日本 / 行基図 |
Research Abstract |
今年度は、ヨーロッパにおける世界地図の形成において日本図がどのように描かれ、日本像が、外国からそして日本からどのように認識されたかに重点をおいて研究をしたが、同時にもう一つのテーマである天皇の問題に関しても試行的研究を実施した。前者の問題については、わが国の形状を表現したもっともプリミティブな行基図をとりあげ、それが、朝鮮、中国、ヨーロッパに伝播した実態を概略的に把握した。さらに、日本における行基図が密教的意味をもつ内容に変容をすることによって「南膽部州大日本国図」というタイトルが付されることに注目した。この名称は「南膽部州大日の本国の図」図と読まれたと推定でき大日如来とアマテラスの集合から「神国」を表現するに至った過程を明らかにした。この行基図が、イエズス会の宣教師たちによって、比較的海岸線の詳しい日本図へと発展していく。この図は世界図と日本図が一双となる、いわゆる「南蛮地図屏風」として用いられていく時点で、行基図の痕跡を全く留めないにもかかわらず、「南膽部州大日本国図」というタイトルを付して、世界図と並べて一双の屏風をなした。そこには、イエズス会の宣教師によってもたらされた世界図の「世界」を認めつつも、なお仏教的世界に位置するという「日本」の存在に固執した実態が読み取れる。 このあと、慶長年間に作成された国絵図を組み合わせた日本図が作られ、やはり、世界図と一双の屏風をなすが、この「日本図」には「南膽部州大日本国図」というタイトルが付されることはなかった。もはや、ヨーロッパから伝来した世界観とは別の仏教的世界観を並べる二元的世界の存在は認識しえない状況となった。
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