2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト社会主義のモンゴル国における牧畜経営と国際開発援助
Project/Area Number |
19520693
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
上村 明 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 研究員 (90376830)
|
Keywords | 開発研究 / コミュニティ / コモンズ / ポスト社会主義 / モンゴル |
Research Abstract |
モンゴル国中部トゥブ県で開発援助プロジェクトによって組織された「牧民グループ」の活動を調査し、また以前からの調査地である西部ホブド県から最近中部地方に移住してきた世帯に調査をおこなった。 トゥブ県での調査では、同県ウンドゥルシレート郡でおこなわれているスイス開発協力庁による"Green Gold"プロジェクトのコーディネーターと牧民グループのリーダー(複数)などからインタビューをおこなった。それによって、牧地がバグ(郡の下部単位)を分割して牧民グループに割り当てられたために、よりせまいなわばり意識がうまれ、牧民グループをこえた牧地の融通がむずかしくなったことがわかった。このことは、合意形成コストなど"transaction cost"をおさえるため、なるべく空間的社会的に小規模のグループが組織される傾向があるが、それは牧地利用調整という牧民グループの最大の目的からすると効果的でないということを裏づけている。 西部からセレング県へ移住してきた世帯では、移動の経路や経費、移住の理由など聞き取り調査した。移住の理由は、第1に移住元の牧地の悪化、第2に移動先の、市場へのアクセス、畜産品価格での有利さ、第3に自然条件が移住元にくらべきびしくないこと、第4に首都に住む子供との関係が密になることがあげられた。カシミアについていえば、移住元にくらべ、おなじ時期でも買い取り価格が高いうえ、気象条件がずっと温和なので、価格がたかい春のはやい時期に売ることができる。移住元では春になっても急な冷え込みになることがおおく、カシミアをはやくすいてしまったヤギは死んでしまう可能性がたかい。 以上のことから、まず「牧民グループ」のかかえる牧地の囲い込みから生ずる根本的な矛盾を指摘することができる、また移住してきた牧畜民の例からは今後の牧畜民の全国規模での移動の予測と対策に役立てることができるとかんがえられる。
|