2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代における女性教育と衛生観の形成-婦人雑誌情報のデータベース化
Project/Area Number |
19520708
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
倉石 あつ子 Atomi University, 文学部, 教授 (60316669)
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Keywords | 教育 / 衛生 / 身体 / 婦人雑誌 / 近代 / 女性 / 家政 / 清潔 |
Research Abstract |
平成19年度から開始された本研究も平成21年度はまとめとデータベース化の完成を目指す年を迎えた。前年度に続き、近代の婦人雑誌を通覧するかたわら、前年度までの資料の蓄積を分析し、分析結果をフィールドワークにフィードバックさせつつ、分担者および連携研究者が論文作成に取り掛かった。一方、並行してキーワードに従って収集資料の整理を行い、「女学世界』『貴女の友』データベース化の作業を行った。研究の見通しとして明治期・大正期あたりのデータベース化が行えるのではないかとの見通しを立てていたが、膨大な資料と格闘することになり、改めて表記のテーマが民俗学や女性学の分野で未開の分野であることが判明した。明治期以降のいわゆる近代に発行された女性向け雑誌は膨大な量であり、明治初期から年代を追って、本研究テーマで雑誌を分析することには、大きな意義があり、現在所与のものとして考えられている「衛生観」の基礎を形成したその過程が、改めて浮き彫りにされることが判明した。今回の申請ではそこまで分析できなかったが、資料の膨大さを考えるとさらに大きなプロジェクトを組んで、再度この課題に挑戦することは、今後、女性学・民俗学の発展に大きな意義をもたらことが予測された。その意味において、本研究は手がかりを開いたことになり得る。また、「衛生観」が都市部と農村部において大きな差異があったことが、民俗学の蓄行資料や明治期の紀行文などから伺うことができ、今後は更に雑誌のみでなく、民俗学資料の同時比較分析も必要なことであることが明らかになった。当初計画したデータベース化の量を全て消化することはできなかったが、できなかったことが本課題に関する資料の多さを実証し、未開分野であることを証明することとなった。 また、今後の課題としては以下の点が指摘できる。 これらの雑誌の恩恵にあずかれた女性たちはごく一部の階層以上の女性たちであり、これらの恩恵にあずかれなかった女性たちの実態は、今後、聞き書きなどによる実態調査とそれに関わる文献資料の発掘を行なわねばならず、本研究のような文献資料のデータベース化による整備と並行して行っていかなければならない、必要不可欠な作業である。そうすることによって、逆に近代婦人雑誌の特色を考えることもできることになろう。 なお、明治期直前の近世の文献はPDF化し、明治期の雑誌内容と比較できるよう、服忌令資料をまとめてみた。
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