2008 Fiscal Year Annual Research Report
文化遺産の担い手に関する民族誌:アソシエーションの公共性に関する人類学的考察
Project/Area Number |
19520712
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹中 宏子 Waseda University, 人間科学学術院, 准教授 (30376967)
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Keywords | 文化人類学 / 文化遺産 / アソシエーション / 主体 / ガリシア / サンティアゴ巡礼路 |
Research Abstract |
本研究は文化遺産を担うアソシエーション会員それぞれの個人史と実際の生活から立ち上がる民族誌を、文化遺産との関係で描くことを目的としている。そこから地域社会における文化遺産の社会的用法、および、遺産を通して表象される地域性が明らかになるばかりでなく、地域性や地域アイデンティティが多様な社会的背景や属性をもった個人から創造されているという実態、そしてそのことが社会を変更し得る社会運動的な性格も帯びる様態の把握が期待される。また、アソシエーション会員個々人の生活に焦点を当てると、国家と個人をつなげると理解されるアソシエーションの基本的性格も揺らいでみえるだろう。つまり、従来の中間集団論の再考にもつながる議論が展開できると予想される。 これらの目的・意義・重要性等を成果につなげるべく、平成20年度にはアソシエーション、公共性、共同性、社会運動等をキーワードに先行研究に関する整理を試み、スペインの文化遺産に関する人類学的な研究の文献収集を行った。この点に関して、共同研究「ソシアル概念の再検討-ヨーロッパ人類学の問いかけ」(国立民族学博物館)と、第11回スペイン人類学会連合の研究大会(シンポジウム「文化遺産-その教育と解釈。境界を越え、オルタナティヴを生産しながら」を組織)では、非常に有益な議論ができた。また、9月には一ヶ月間のフィールドワークを行い、アソシエーション「サンティアゴ巡礼路友の会・ガリシア」と「オス・ロボス」の会員数人に関する調査を行い、文化遺産に込められた意味を、集団的な記憶や歴史という観点からではなく個人の視点から分析した(備考欄参照)。3月にもサンティアゴ巡礼友の会連合主催「巡礼宿のボランティア講習会」で、3日間の参与観察を行った。 今後は口頭・論文発表における問題点を整理し、次の現地調査につなげ、さらにこれまでの理論的枠組みを相対化するような問題にも取り組みたい。
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