Research Abstract |
アジア諸国をはじめとする発展途上国の鉱産地帯では,スモール・スケール・マイニングと称される活動が盛んである.これは,稚拙な道具を用いて金をはじめとする希少金属を採掘するもので,従事者の大半は貧困層に属しており,かれらは日々の生活に追われている.そのせいか,従事者は自身の健康や,マイニングが住環境に深刻な問題を与える諸リスクを低く見積もる傾向にある. 行政担当者は,この種の環境リスクを当事者に伝え,状況改善の必要性を認識しているが,十分に対応できないでいる.1つには,かれらの大半が鉱山開発などの専門家であることが多く,社会・人文科学系の手法を利用するための教育を受けてきたわけではない. 本研究チームは,こうした状況にある行政官を対象にしてフィリピンやベトナムで教育ツールを紹介するワークショップを開催したことがある.その過程で,より汎用性の高い住民参加型のプログラム開発の要望が求められるようになった.そのため,本研究ではアジア地域を中心に文化人類学的調査を行い,地域や国ごとの特徴を把握し,汎用性が高く,導入に障壁が低い教育プログラム開発を試みることにした. 研究の遂行にあたって,研究チームでは統括責任者と分担者が独立して作業を行ったが,年度途中で成果発表を含む会合を持ち,情報の交換と相互の作業の質の向上を図るようにつとめた.研究過程では,アジア地域での文化人類学的調査,既存の教育ツールの収集と評価,国際機関を利用したワークショップなどでの成果報告と評価分析を実施した. 研究期間内に,4回のコロキウムの開催,国際会議での5回の口頭発表を行った.発表した論文は研究チーム全体で20(本報告書提出時に印刷中の論文は含まない),著作は2つとなった. これまでの研究からは,教育ツール自体の多様化を図ると同時に,それらの汎用性(地域および対象とする教育活動分野)の向上をはかるための調査研究が今後も必要であることが明らかになった.
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