2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 Waseda University, 大学院・法務研究科, 教授 (10009839)
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Keywords | 法哲学・法理学 / 法制史 |
Research Abstract |
本研究のねらいは、「国民主義」が、西洋史においてどのように生成し、とりわけ近世・近代において多様な思想家・政治過程にどう作用したかを解明することにある。本年度は、このねらいに沿って、「国民主義」思想の形成と変容、近代の「国民的自由主義」や農本主義的「国民主義」に発展していったかについて基礎的資料、問題意識を共有する基本的文献を解析し、全体像の構築を目指した。すなわち本年度はとりわけ、シヴィック・ヒューマニズムを対象とし、古代ギリシアから近代へのその系譜をたどるとともに、その前提としての、古代共和制の諸思想と、それを再生させた〈古代共和制のイメージ〉の歴史を追跡した。 なかでも、「自由」と「祖国」の相互緊張をいち早く鮮明にした、マキァヴェリを含むルネッサンス期思想のこの観点からの考察に重点を置いた。また、「自由な人格」と「統合国家」との間で思考したプーフェンドルフやトマジウスら啓蒙期自然法論者の思想のダイナミズムの考察、「個人と国家」の間でのヘーゲルの苦闘の追跡、自立と帝国主義の間で思考したヴェーバー的「自由主義」の分析などに関わって、笹倉のこれまでの研究を全面的に見直すとともに、これら諸思想の相互比較をも進め、「国民主義」の共通軸と偏差を明らかにしようとした。この問題の考察において今回着目した点の一つは、古いヨーロッパにおける「家」と家長の持続的存在が、以下に根強く、かつそれが、国家・市民社会への結束とともに、各人の独立意識を支えるものとして、大きな意味を持ち続けた事実である。この点を単に社会史においてでなく、精神史においても位置づけることによって、「国民主義」の基盤を把握できると考えられる。 これらの成果は、2007年10月・11月に出版した『法思想史講義』にまず、結晶化させた。
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