2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 Waseda University, 大学院・法務研究科, 教授 (10009839)
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Keywords | 法哲学・法理学 / 法制史 / 国民主義 / 共和主義 / 本居宣長 / 法学講義 / シヴィック・ヒューマニズム / 法解釈史 |
Research Abstract |
本研究は、「国民主義」の思想原理の生成、とりわけこの原理が近世・近代において多様な思想家・政治過程にどう作用したかを解明することにある。本年度は、昨年度に引き続き、思想史研究分野を中心にこの問題を考えることを第一課題とし、身分的・地域的に分裂した社会の中から、どのように「集中・統合」への意識が生成していったかを明らかにする問題に取り組んだ。この点については、西洋史におけるシヴィック・ヒューマニズムが具体的に個々の思想家において、「国民主義」とどう関係したのかの考察を進めた。その成果として、かたちになったのは、次の2点である。 (1)国民主義と民主主義、共和主義の関係を考え、最終的に、これら3概念を明確に識別する認識を得た。すなわち、国民主義を<国民に自由と国家事項への関与とを付与することによって国家帰属意識を強化する原理であり、それ自体は君主制下でも民主制下でも採用されるもの>ととらえ、共和主義とはそれが共和体制下で表出したものであり、民主主義への展開の可能性をもったと考えた。そして、今日の司法制度改革(とくに裁判員制度)をめぐって憲法学で、民主主義と共和主義が問題になり、また自由主義の立場からの批判も盛んであるが、今回の司法制度改革は、上記の観点、とりわけ国民主義と関連づけてとらえることが重要ではないかという点を、春の民科の学会合宿報告で展開した。 (2)日本史に関し、外国の文化や政治との接触で国民意識がどう覚醒したか、それが国民主義の基盤にどう展開していったかを考える作業としておこない、その成果の一部を、日本における法解釈史の論考において活用した。重要な論点としては、江戸期の本居宣長における「日本的なもの」の覚醒と、明治期における日本的な法と法学の形成における国民意識とがあった。この点に関する成果は、秋に出る『法学講義』の一部として発表する予定である。
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