2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10009839)
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Keywords | マキァヴェッリ / ヘーゲル / ヴェーバー / 国民主義 / 統合 / 自立 / シヴィック・ヒューマニズム / 共和主義 |
Research Abstract |
本年度は最終年であったため、まとめのため書籍原稿の執筆を進めた。その結果、約350頁分を書き上げることができた。今後、出版に向け仕上げを進めていく。その際、中心となったのは、丸山眞男が定式化した意味での「国民主義」を広く西洋政治思想史の分析に応用しつつ、その観点から、マキァヴェッリ、ヘーゲル、ヴェーバーの思想の比較的考察を進めることであった。 「国民主義」的思考は、古代アテネ・ローマですでに鮮明な思想的表出を見た。この思想は、その後ルネサンス期にシヴィック・ヒューマニズムにおいて再生し、マキァヴェッリや、モンテスキュー、ルソーらの思想を規定し、やがて、ヘーゲル、さらには(アメリカのデモクラシー像を媒介にして)ヴェーバーにまで及んでいる。この思想については、しかし単にそうした思想史的系譜論だけでなく、国内の危機や外敵の侵入に直面し,それに対抗しうる新しい国家統合を求める人びとが共通にもつ思考傾向、すなわち一方の強いリーダーシップと、他方の広く国家構成員の政治参加・自由を基盤にしつつ国家への結束を図ろうとする思想運動としても位置づけられる。 上記3人の政治思想をめぐってはともに、〈かれは国家主義者なのか、それとも自由主義者なのか〉のかたちで解釈上の対立が続いてきた。この点に関して本研究では、〈そのような二者択一的発想では3人の思想構造はとらえられず、「国家」と「自由」の内的関連を明らかにすることが重要である〉とした。こうして「国民主義」は、3人の思想の全体構造とその意味を、かれらを思想史の中に置きかつ相互に関連づけつつ理解するカギとなることを、本研究は明らかにした。
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