Research Abstract |
平成21年度は,環境公共利益訴訟の国際動向についてとりまとめを図り,諸外国の研究者との意見交換やシンポジウムを企画・実施した。 具体的には,第1に,EU地域の動向に関しては,9月にドイツ・ビュルツブルクの行政裁判所を訪問し,EU行政裁判官協会の環境委員長であるヘールマン氏のヒアリングを行うとともに,ドイツの複数の環境NGOと意見交換し,EUおよびドイツの環境公共利益訴訟の最新状況について情報収集と意見交換を行った。 第2に,アジアの動向については,7月と3月にタイの最高行政裁判所を訪問し,団体訴訟の動向についてヒアリングするとともに,11月に日本で行われた国際シンポジウムにおいて,台湾,マレーシア等の法曹の参加を得て,環境公共利益訴訟のセッションをコーディネートし,意見交換を行った。 第3に,アメリカの動向については,カリフォルニア大学バークレー校の教授陣と市民訴訟の動向について意見交換を行うとともに,弁護士グループや環境NGOから,主にカリフォルニア地裁に係属している沖縄・ジュゴン訴訟についてヒアリングを行った。 これらの作業により,EUでは,環境団体に広く司法アクセスを認める判決が欧州裁判所で出されるなど,オーフス条約の理念の具体化傾向が認められることを確認した。また,アジアにおいては,台湾やタイのように,環境団体訴訟が広く認められる国がある反面,マレーシアのように,末だ原告適格が大きなハードルになっている国があることを認識した。また,今後の研究の方向性としては,日本における環境公共利益訴訟の導入を睨み,裁量統制等,実体的審理の問題に焦点を当てる必要があることを強く認識した。以上の成果については,論文として順次公表を始めたほか,弁護士会,NGOまたは行政主催の各種講演会で,情報発信した。
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