2008 Fiscal Year Annual Research Report
大学法の日独比較研究-新公共管理による大学自治の変容-
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19530029
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
徳本 広孝 Tokyo Metropolitan University, 都市教養学部・法学系, 准教授 (20308076)
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Keywords | 行政法 / 行政組織法 / 大学法 / 行政訴訟法 / 学問法 / 試験法 |
Research Abstract |
本研究は、国立大学法人が採用した新公共管理型の大学運営のもたらす大学自治の変容につき法的な観点から考察を加え、同法が予定する国と大学の法的関係および大学内部機関間の法的関係の解明を目的とした。大学自身による組織運営・内部統制がどのように行われるのか、そうした自律的システムに対して監督官庁の関与がどのように行われ(民主的正統性の要請・程度の問題)、さらに当該関与を通して形成される法的関係はどのようなものなのか(外部法・内部法の問題)等である。これらの論点の解明は、我が国の大学法制の検討においても不可欠である。本研究では主にドイツの文献の収集を進め、さらに、これらの資料を通してドイツの新公共管理型大学のイメージをつかむことができた。 一方、我が国では、国立大学法人制度を考察する上で、参考となる判例が出されている。東京高判平成19年3月29日判例時報1979号70頁は、国立大学法人が実施する入試で不合格となった原告が、合格の意思表示を求めて提訴した事案である(自治研究平成21年6月号で評釈を公表予定)。本判決では入試判定に際しての裁量の統制が問題とされたが、競争原理を導入している国立大学法人制度の場合、こうした入試判定における大学の裁量が広がる可能性がある。大学の個性化の推進により競争力を高めるという思考と、各大学がどのような学生を入学させるかの問題は密接に関連するからである。ドイツでも競争原理の導入が大学入試制度における大学自身の判断の余地の拡大を導く点が指摘されるとともに、このことが、大学入学資格の制度を採用し、学生に対して大学学修の機会を保障する配分参加権の理念と整合的と言えるかが問題とされている。今後は、我が国の上記判例を念頭に置きつつ、ドイツの大学入試制度及び国家試験制度をめぐり生じている判例・学説の検討を進めたいと考えている。
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Research Products
(1 results)