2009 Fiscal Year Annual Research Report
個人保護型警察行政立法を契機とする、警察法論再構築のための比較法的実証的研究
Project/Area Number |
19530031
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
今村 哲也 Meiji University, 法科大学院, 教授 (00160060)
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Keywords | 行政警察 / 警察活動における人権擁護 / 警察監察 / 人権審議会 / オーストリア法 / 制度改革提言権 / 臨場監察権限 / 留置施設視察委員会 |
Research Abstract |
本研究の契機であるわが国警察システムの行政警察化は、大事においてはテロ対策、また日常レベルにおいては高齢者あるいは児童に対する虐待防止法等の制定施行により法制上はその展開をみせるが、具体的活動についてはなおも「不文規律」たる民事不介入原則(公私二元論の残滓ないしは警察法2条2項への過敏反応)に呪縛されているかにみえる。これについては民事不介入原則に代わる新たな法「理論」の確立および、呪縛から解放された行政的警察介入につき懸念される、人権侵害回避のための新たな制度構築が不可欠である。前者については、侵害行政への伝統的拘束原理として機能してきた「比例原則」を、民事介入による警察給付の原則ないし基準として改めて理論上位置づける必要がある。わが法には欠如するが、統一警察法草案2条および安全警察法29条で比例原則を明記するドイツ・オーストリアの研究者との対話により、理論・実務双方でのその重要性を確認した(シュパイヤー行政大学院ピチャス教授、連邦首相府局長・ウィーン経済大学リーンバハー教授)。他方、人権擁護からの警察に対する制度的かつ作用的監察機能を果たす機関の制度化については、内務省に附置されるオーストリア人権審議会が世界で唯一の存在と機能を担っている。人権NPOの代表者・憲法学者・警察実務家等から構成される本審議会について、その歴史的設立契機・具体的構成と機能および権限と、会議運営および監察に当たる下部委員会の活動にいたるまでの詳細な法システムの考察・分析を、わが国においてはじめて論考として発表し(「警察における第三者的内部統制」)、また現地調査の際には、審議会会議に参加・傍聴を許され、運営の実際を見聞することができた。
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