2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530035
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
五十嵐 正博 Kobe University, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70168102)
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Keywords | 国際法 / 請求権 / 消滅時効 / 戦後補償裁判 |
Research Abstract |
平成20年度は、中国「国民」の戦後補償裁判に関する「西松建設事件」最高裁第二小法廷判決の批判的な検討が研究の中心になった。戦後補償裁判における「請求権」に関する最高裁の判断は、その他の関連する裁判にも決定的な影響を及ぼすものと思われたがゆえに、本判決の検討が何にもまして必要と思われたからである。最高裁は、「サンフランシスコ条約枠組み論」を展開して、「請求権の『放棄』とは、請求権を実体的に消滅させることまでを意味するのではなく、当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示した。ここからは、少なくとも本件の「請求権」に「消滅時効」は適用されないと解されよう。また、「戦後補償裁判の法理と個人の人権」について、より広い視野からの考察を行った。 2008年10月21日、イタリア破毀院は、第二次世界大戦中にナチス占領下のイタリアで起きた住民虐殺事件、いわゆるチビラッチ事件において、ドイツ政府に賠償金の支払いを命じるという画期的な判決を下した。昨年度、本研究において検討した2004年のフェリーニ事件判決をおおむね踏襲したものである。なるほど、本件の主たる争点は、主権免除であるが、「その行為が国際犯罪を構成するような、人の自由および尊厳の重大な侵害である場合には、一定の制限に服する」と判示したことは、おおいに「時効」の問題とも係わるかもしれず、さらなる検討が必要と思われる。なお、本件は、昨年末、ドイツがイタリアを相手に国際司法裁判所に提訴するに至った。今後のICJの判断がきわめて注目されよう。 ケンブリッジ大学では、資料の収集およびクロフォード教授らと意見交換を行うことができた。
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Research Products
(3 results)