2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530035
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
五十嵐 正博 Kobe University, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70168102)
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Keywords | 国際法 / 戦後補償裁判 / 消滅時効 / 請求権 |
Research Abstract |
本研究の目的は、第2次世界大戦後の国際人権法、国際人道法および国際刑事法の発展の中で、被害者の救済の権利が次第に確立されつつあるとの認識から、消滅時効の問題を考察することである。とりわけ1990年代から、各国の国内裁判所において、国際人権法、国際人道法の重大な侵害の被害者による損害賠償請求事件が提起され、わが国、ギリシャ、イタリアにおけるいくつかの判決は、加害者側の「時効」「主権免除」などの抗弁を退け、被害者の主張を認める判決を下している。 本研究のこれまでの検討からは、国際法上の消滅時効は、かつて多くの仲裁裁判において、また学説上も争点となったが、今日国際法の教科書にもほとんど記述は見られない。このことは、国際法に関する紛争において、訴訟を提起する時間的制限(消滅時効)はもはや問題とはならないことを示しているのではないか。この点で、1953年、国際司法裁判所によるアンバティエロス事件判決が大きな意味を有するか否かは、さらに検討が必要であろう。 平成21年度は、以上のこれまで明らかしたことを踏まえて、主に、わが国裁判所における韓国関連の強制連行・強制労働事件諸判決を検討し、さらに、イタリア破毀院の下したフェリーニ事件、チビラッチ事件判決に関する新たな判例評釈などを検討した。そこからは、消滅時効に関しても、国際法の発展、すなわち、国際人権法および国際人道法の重大な違反がユス・コーゲンス(強行規範)として位置づけられるとの認識の高まりの過程が密接に関連していると思われる。この点をさらに深めた研究が求められよう。 なお、本課題の研究成果の一部は、『国際協力論集』18巻2号(2010年10月発行予定)に掲載する予定である。
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