2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際環境法における法制度の執行過程の多様化と複雑化に関する研究
Project/Area Number |
19530038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
児矢野 マリ Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (90212753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 ゆかり 龍谷大学, 法学部, 教授 (70303518)
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 専任講師 (00405143)
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Keywords | 国際法学 / 国際環境法 / 執行 / 環境条約 / 持続可能な開発 / 地球温暖化 / 廃棄物の越境移動 / 国際法規範間の重複・抵触 |
Research Abstract |
本年度は、各自の分担による作業を本格的に行い、その成果の相互検証作業を進めた。児矢野と高村は主に、(1)制度の複合化に伴う国際法規範問の重複・抵触とその調整(児矢野による「ダニューブ・デルタ事件」の継続的分析)、(2)環境条約の国内実施における国内制度の調整(研究協力者<海上保安大学校専任講師鶴田順氏>の支援による、廃棄物の越境移動規制バーゼル条約の実施過程における条約改正問題の分析)、(3)執行手段の多様化(高村による大気・気候系の保全<地球温暖化>レジームの分析)をより深化させた。伊藤は、環境と開発の観点から、とくに発展途上国において国際環境法の執行がいかなる特徴的な法的論理を持っているのかを明らかにすべく、途上国の「開発主義」体制が形成された歴史的経緯やその帰結について考察を進め、国家統治原理における「公共」概念の欠如が開発と環境の相克を生み出している構図を解明した。また、2回(8月、11月)の集中研究会合を開き、海外の実態調査(国際機関の訪問等)と条約締約国会合等出席(5月、3月)も行った。他の学問分野(行政法、行政法学)の研究者・実務家(環境省)と、条約の国内実施につき意見交換・討議を行い(12月、2月)、新たな角度から重要な知見を得た。そのため当初の予定より多くの旅費を支出することとなった。 本研究の論点は多岐に及び、かつ分析対象も極めて広いため、焦点をしぼって共通の論点を抽出・検証しつつ、統合的に議論を進めることに苦慮したが、各自の緻密な実証分析作業に基づき、最終年度に向けて共通の基盤を固めつつある点で、大きな成果を上げた。最終年度となる次年度は、各自の実証分析作業を継続しつつ、全体の統合に向けた綿密な理論的作業を進めたいと考えている。
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Research Products
(16 results)