2007 Fiscal Year Annual Research Report
電子証拠の紛争処理解決手続における取り扱いに関する法的研究
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19530065
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 宏直 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (00293077)
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Keywords | ADR / 証拠 / 電子証拠 / 仲裁 / 調停 / UMA / ESI / 秘密保護 |
Research Abstract |
本年度は主に米国および英国におけるADRの主要な注釈書を基本資料として訴訟手続と並んで代替的紛争解決手続(ADR)における証拠の取り扱いに関する基本原則があるかについて資料の収集検討を行った。 ADR手続のうち仲裁については証拠の収集および証拠の評価についても、当事者の合意をベースに仲裁人に手続の運営に関する幅広い裁量が認められている。各国が仲裁法を定める中で1999年の国際弁護士協会仲裁規則(IBAA)における証拠調べに関する規則が基本原則を示しているものとして引用されることが多い。仲裁においては、解決の根拠を当事者の合意に求めると同時に、解決の基準は法的規範を中心とする。そのため、仲裁手続においても大陸法の国とコモンローの国では、訴訟における証明の基本原則の影響を受けることが比較法的検討を行ううえで考慮すべき点である。 調停に関しては、調停の概念および歴史的背景が各国で多様であり、IBAAのような基本的な規則を定めることに困難が伴う。そのなかで、UNCITRALのコンシレーション・モデル法、米国の全米統一州法委員会議(NCCUSL)による統一メディエーション法が基本的な枠組み作りを模索するものといえる。これらの規則は取引紛争においても調停を解決方法として取り入れようとする目的がある。しかし、調停手続は仲裁と異なり法的基準に基づく解決をとらないこと、終局的紛争解決手段ではないことを理由として、証拠および証拠調べが概念として問題にならないこと、調停手続と後訴における秘密保護の実務的な問題を中心に議論がなされ、理論的な検討を行う際には調停手続の主題の性質についても考慮すべきであることが分かる。
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