2008 Fiscal Year Annual Research Report
電子証拠の紛争処理解決手続における取り扱いに関する法的研究
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19530065
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 宏直 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (00293077)
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Keywords | ADR / ESI / 電子証拠 / 仲裁 / 調停 / 秘密保護 |
Research Abstract |
本年度は、主に証拠法理論との関係について検討を行った。裁判と比較したADRの特徴には、訴訟当事者の費用、時間の他に紛争当事者の個人情報や営業秘密などのセンシティブ情報の保護を実現することが求められる場合に、公開を原則とする裁判制度ではなく選択されることがある。そして、訴訟手続においても証拠収集と当事者の守秘への利益の配慮のために、米国のプロテクティブォーダーや日本でも存在するインカメラ手続などが設けられている。しかし、証拠資料が電子的証拠に移行する過程で、これらの訴訟手続における証拠収集と当事者の秘密情報保護への利益の両立が困難な場合が多くなっている。ADRは当事者限りでの紛争解決であることを貫くことで、特に、仲裁手続では、守秘の実現が組み込みやすい。これに対して、調停などのADRでは手続規則の遵守という考えが取り込みにくい性質であるものについては、当事者の秘密情報への利益の両立が困難である。これに対して、裁判手続では、電子的証拠と秘密情報保護への利益の両立のための規則作りが始まっており、これらの考え方がADR、仲裁手続における仲裁人の証拠調べに関する指揮にも反映されていくものと考えられる。 本研究課題は裁判手続とADR手続を対照比較することで、電子的証拠に関する証拠法理論への影響を検討することを目的としているが、特に実務の変化が急速であり、近い将来、裁判手続とADR手続の相互で証拠取り扱いについての実務的原則が生成されていくものと考えられる。
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