2007 Fiscal Year Annual Research Report
著しく不公正な会社組織行為の法的取扱いに関する研究
Project/Area Number |
19530068
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浜田 道代 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (90022425)
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Keywords | 商法 / 企業組織法 / 法人 / 金融法 |
Research Abstract |
著しく不公正な会社組織行為の法的取扱いについて、これまでの判例・学説の蓄積があるのは、もっぱら募集株式の発行等を巡るものであった。会社法制定前の用語でいえば、新株発行を巡るものである。 新株発行規制については、わが国ではすでに半世紀前から世界でも稀にみるほどの大幅な規制緩和が進められたため、事後救済が求められる事案が続出した。実際問題としては、可能な限り事前の差止めによって違法行為がなされるのを防ぐべく、立法解釈が展開されてきている。そのこと自体は有意義であるが、しかし差止めによりえなかった場合には、無効の訴えが提起されることにならざるをえない。その場合にどのように法的に扱ったらよいかは、既存株主の保護と取引の安全という、二つの相矛盾する要請があるために、きわめて困難な問題である。これについては半世紀以上にわたり、膨大な判例・学説が蓄積されており、これを踏まえることなくしては、会社組織行為一般についての法的取扱いについて、新たな議論を模索することはできないという観点に到達した。 そこで、平成19年度においては、募集株式の発行等の法制がどのような変遷を辿ってきたかを整理し、膨大な判例を網羅的に調べ、学説上どのような解釈論が展開されてきたかについても、改めて議論の経緯を振り返った。また、2005年に「会社法」が制定され、関連条文が一部変わったことにより、解釈論の見直しが迫られている点についても、それぞれの論者が取り上げている視角を分析することを通じて、自らの視点を明らかにすることができた。 それらの検討を進める中で、会社法が定める募集株式の発行等の無効判決の効果に関する見直しが、問題解決の一つの鍵になりうるのではないかという考えに到達している。このようなアプローチでもって、募集株式の発行等につき、新たな解決策をどこまで提示できるか、さらにはそれを、会社設立行為一般についてどこまで広げることができるかが、今後引き続き取り組むべき課題である。
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