2009 Fiscal Year Annual Research Report
ADR(裁判外紛争解決)の法化とその内在的限界の研究
Project/Area Number |
19530070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 文 Kyoto University, 法学研究科, 教授 (40230445)
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Keywords | 調停 / 法律事務 / 法的助言 / 評価型調停 / 交渉促進型調停 / confidentiality / 証拠能力 / 職権探知 |
Research Abstract |
平成21年度は,国際シンポジウムのとりまとめ(ADR法学会)とコメンテーター(アジア法学会)を通じて,手続主宰者の資質について比較法研究を行った。手続主宰者が法律家であることが必要かについては,常に必要と考える説と市場の選択に委ねるという考え方があり,現行日本法のようにその中間(認証を受けた機関ならば非法律家が手続を主宰できるが,弁護士の助言を要する)という選択肢もあり,どのような制度を設計すべきかはまさにADRの法化の評価に繋がる問題である。逆に,法律家が主宰者となる場合に,非評価型の手続で法的情報をどのように使うかという問題もあり,法的情報提供の工夫により,一定範囲で法を利用しながら交渉促進を図ることが可能であり,かっ必要ではないかと考えるにいたった。 具体的なADR手続との関係では,金融ADRの設立にともない,ADRの国際規格(ISO10003)との比較を行いつつ,金融ADRの法化の契機とその態様について,座談会方式での研究会に参加した。日本ではオンブズマン方式は導入されておらず,それは当事者の主体性と機関側の主体性の交錯によってADR手続構造が混乱することを避けているようにみえるが,実際には金融ADRは相談・あっせん段階と調停段階の協同がなければうまく働かないことを考えれば,正面からオンブズマン方式を検討すべき余地があると思われる。いずれも,訴訟手続の効率性・範囲や証拠法と関わる問題である。また,医療ADRについてもシンポジウムに参加しコメントを行ったが,ここでも,ADR機関の調査権限や資料の扱い方等について,問題の所在を確認した。
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