2010 Fiscal Year Annual Research Report
ADR(裁判外紛争解決)の法化とその内在的限界の研究
Project/Area Number |
19530070
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 文 京都大学, 法学研究科, 教授 (40230445)
|
Keywords | 調停 / ADR / 家事調停 / 民事調停 / ADR法 / 非訟手続 / 法化 / 証拠排除 |
Research Abstract |
平成22年度は,ADRの法化の一例として,非訟事件手続法・家事審判法の改正における家事調停手続の改正作業に携わった。本研究との関係では,家事調停と家事審判手続の関係について,前者の資料の後者における利用可能性(証拠排除の可能性),家事調停手続の記録(とくに家庭裁判所調査官による調査)や他方当事者提出資料の閲覧可能性,事実の調査(職権探知による証拠調べ)の規律,手続に関わる者の不偏性保持の方法などが論点として挙げられる。民事調停と異なり感情的な対立が激しいとされる家事調停に関しては,法化に対して慎重な立法態度が大勢を占めたが,なお,今後の理論と実務の深化によって再検討をするべき論点を見出すことができた。 このような論点は,法解釈論としても詰める必要があるが,22年度は比較法的な分析も行った。とくに,アジア各国の研究者・実務家の参加により行われたRound Table Conference on Mediation in Asiaは有益であった。一般的に,調停・仲裁の概念の多様性,アジア各国におけるADR実務の多様性についても知見を得ることができたが,とくに,調停における法的情報・観点の扱いについては従来固定的に考えられてきたが,相対化する視点を得ることができたように思われる。 さらに,民間型ADRにおける法化の意義については,22年秋に発足した日本ADR協会において,ADR機関の実態を見聞する機会を得ることができたので,これを前提として研究を進める必要がある。このような機会が生ずることは本研究を開始する際に予想していなかったことであり,本研究実施計画を超えることとなるが,日本のADR法制全体を考える際に民間型ADRの法化の限界というハードケースを理論化することが今後の課題である。
|