2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530072
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 顯治 Kobe University, 法学研究科, 教授 (50222378)
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Keywords | 契約法 / 競争秩序 / 損害賠償 / 厚生 / 権利 / 独占禁止法 |
Research Abstract |
今年度は、契約法において「厚生」と「権利」が対峙する典型的な問題である、「独占禁止法違反の私法契約の効力」を取り上げ、その基礎にある現代契約法の原理的基盤を検討した。そこでは、1.独占禁止法違反企業と契約を締結した消費者には、実質所得の目減りが生じ、これに伴って消費者の効用水準が低下し、これに対応して、全消費計画の見直しがなされることを明らかにした。その法学的意義としては、伝統的意思表示論が他の財との比較を度外視して「目の前の財を購入するかどうか」という意思決定論を前提にしていたことを明らかにし、これに代えて、意思決定とは、「所得制約の下で、他の財と比較しつつどのように自己の効用を最大化するか」という決定であることを明らかにした。さらに、かかる「市場における意思決定とその法的保護」を契約法・不法行為法を用いて図ることの重要性を明らかにした。契約法の枠組みにおいては、財価格の不当な吊り上げは、消費者の意思決定の基礎となる所得の実質的な目減りを惹起するものであり、これを法律行為法の枠組みで検討する必要があることを明らかにし、不法行為法の枠組みにおいては、消費者の低下した効用水準を填補するものとしての、「補償変分」に着眼して、損害賠償額を算定するという試案を提示した。 この成果は、2007年6月9日における、北海道大学民事法研究会における研究報告、2007年8月に開催された、神戸大学21世紀COEプログラム「市場化社会の法動態学」第5回国際シンポジウムにおいて、「市場における意思決定と損害賠償」と題する研究報告、および2007年9月24日に、神戸大学21世紀COEプログラム・早稲田大学21世紀COEプログラム合同研究会における「市場メカニズムと損害賠償」と題する研究報告において、報告された。
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Research Products
(5 results)