2007 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業の資金調達とステイクホルダーとの利益調整の研究
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19530073
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松原 正至 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10252892)
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Keywords | 中小企業 / 資金調達 / 直接金融 / M&A / ステイクホルダー / 会社法 / 金融商品取引法 |
Research Abstract |
本年度においては、主としてわが国の中小企業の資金調達およびステイクホルダー論についての調査・研究を行った。ここでは、次のようなことが明らかとなった。 1、中小企業をめぐっては依然として、銀行が最も影響力のある債権者であり、株式や社債を発行する直接金融を行おうとする場合、債権を保全しようとする銀行と資金調達を行おうとする会社との間に利益相反の関係が成立する。これは株主と銀行の関係でも同じことがいえる。 2、かかる利益相反を生じる場合にも会社法上は取締役は株主の利益を第一に考慮することが求められている。 3、しかしながら、敵対的なM&A防衛策における議論として、企業価値の向上という価値観が提唱されており、そこでは債権者や地域を含めたステイクホルダーの利益をも取締役は考慮すべきかということが問題となっている。 4、このような考え方は海外においても議論されている。まず、イギリスの新会社法の下でも172条において、取締役はステイクホルダーの利益を考慮しなければならないと定められたことからも「何らかの利益」の存在を検討しなければならない状況に直面している。 5、株主の権利を第一義に掲げる米国でおいてさえ、M&Aの局面においてconstituency statutesとしてさまざまな利害関係人の利益を考える考え方が一部に提唱されてきている。 これらの点について成果を公表するために、現在準備を進めているところである。 また、文献等のデータベース作成は研究開始とともに進めているところであるが、現在は未だデータ数が少ない状況である。
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