Research Abstract |
本研究は,当事者が合意した契約が何らかの事由によって履行できなくなった場合における契約の効力について,日本とフランス,さらにはEUの法制度を比較研究することにより,混迷しているわが国の解釈論に,新たな視点を提示することを試みるものである。そのために,本年度は,一方では,1999年5月25日にヨーロッパ評議会およびヨーロッパ議会において採択された,「消費財の担保責任および売買の一定の局面についてのEC指令」のフランス法への影響を明らかにした(比較法研究の論文)。すなわち,この指令は,動産の売買契約において,事業者である売主が,(1)目的物の引渡しの時に存在した適合性の欠如につき,消費者に対して責任を負うとする適合性の法定担保責任と,(2)法定の権利以上の権利を買主に合意によって与える約定担保責任とを認めるものであり,瑕疵担保責任と債務不履行責任とを一元化している。そこで,これをフランスの国内法化するに際して,民法を改正するか,それとも消費法典に編入するかをめぐって,学界を二分するかのような激しい議論の応酬がなされ,結局,同指令を消費法典へと転換した。本研究では,この結論をどのように評価するかが,今後の大きな課題であることを明らかにした。他方,瑕疵担保責任について,日本法の沿革を明らかにし,その問題点を追究した(立教法学の論文)。その結果,沿革的には,瑕疵担保責任を売主の無過失責任であると解し,法律の規定に基づく特別な責任であるとしていたことが明らかになった。今後は,このフランスと日本の議論の接点を明確にする予定である。
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