2009 Fiscal Year Annual Research Report
日仏における債務不履行および瑕疵担保責任の基礎理論の研究
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19530079
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野澤 正充 Rikkyo University, 法務研究科, 教授 (80237841)
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Keywords | 瑕疵担保責任 / 債務不履行責任 / EU法 / 危険負担 / 民法改正 / フランス法 / 法定責任説 / 債務不履行責任説 |
Research Abstract |
本研究は、瑕疵担保責任と債務不履行責任の関係につき、以下の知見を得た。 現行民法の解釈論としては、瑕疵担保責任を債務不履行責任と解する立場が有力であるが、大陸法に従い債務不履行につき過失主義を採用している日本民法が、無過失主義をとる瑕疵担保とは両立せず、このような見解は論理的な問題点を含んでいる。のみならず、より根本的な問題は、大陸法においては、瑕疵担保責任を債務不履行責任として構成する必要がないということにある。すなわち、イギリスのコモン・ローでは、動産売買には、「買主をして注意せしめよ」の原則が適用され、売主の明示の担保があるか、売主に詐欺があるかするのでなければ、売買の目的物に隠れた瑕疵があっても売主の責任を追及しえないのが一般的なルールであった。しかし、後には、一定の場合に、物の瑕疵に対する売主の黙示の担保がみとめられるに至る。これに対して、大陸法では、すべての人が、彼が売り又は譲渡する物を担保する義務を負う。つまり、大陸法では、英米法におけると異なり、目的物の瑕疵については当初から、売主が責任を負うのである。その理由は、瑕疵担保責任の本質が危険負担の法理にあり、その危険負担の法理は、「物の所有者が危険を負担する」(Res perit domino)との古い原則に基づくことによる。つまり、大陸法では、所有権が買主に移転するまでに生じた瑕疵については、売主が無条件に責任を負わなければならず、それが瑕疵担保責任であると解されてきた。しかし、産業革命以降のイギリスにおいては、「初期資本主義の標榜する自由主義・個人主義精神の所産」としての「買主をして注意せしめよ」(caveat emptor)の原則により、売主は、合意がない限り、瑕疵についての責任を負わないと解される。そうだとすれば、瑕疵担保責任は、債務不履行責任ではなく、危険負担の法理に基づく法定の契約責任であると考えられる。
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Research Products
(5 results)