2007 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性の文化的価値に着目した保全法制度に関する研究-天然記念物制度再考
Project/Area Number |
19530085
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 満彦 University of Toyama, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 啓 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (60322369)
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Keywords | 環境法学 / 保全生態学 / 環境社会学 / 環境政策 / 文化人類学 |
Research Abstract |
19年度においては、天然記念物制度の形成を把握する意味から、戦前の文部省外郭団体機関誌「史蹟名勝天然記念物」の解読を高橋が中心に行っている。天然記念物制度の創設には、当時の国家主義的背景が語られることが多いが、近年注目されつつある、人と自然の関係性や、生物多様性サービスの文化的側面を既に一定程度取り込んだ制度であるという仮説を立て、これを裏付ける見地から、従来この制度の欠点とされた「曖昧さ」を逆に長所ととらえる意見発信を、池田が中心に行った。 また高橋は、比較法的視点から、米国の文化財保護法に該当するNational Historical Preservation Act (NHPA)の研究を行っている。特に、NHPAを利用して、日本の天然記念物ジュゴンを米軍基地建設から守ろうという訴訟が米国裁判所を舞台に起きており、高橋はこの訴訟の推移を注意深く見守っている。NHPAには、天然記念物制度はなく、動植物は保護対象になっていないが、この訴訟の判決において、裁判官は、文化相対主義の観点から動物の文化財的価値を明言しており、米国環境法の中でも、新しい動きである。この訴訟に関連して高橋に、国際的NGOであるWWFなどから研究会への出席依頼や、来る20年次の環境法政策学会で評論を依頼されたりしており、論文としてまとめる予定である。 現地調査は、20年度を主とするが、19年度においても、豊岡市のコウノトリ生息地調査や、富山市内の鴨網猟が行われていた旧共同狩猟地のヒアリングなども行った。 天然記念物制度に関する研究はあまり多くはなく、制度に対する評価もまちまちであるが、自然と人間の関係性、自然環境と文化の密接なつながりが再確認されつつある現代において、我が国の自然観や文化に適合した、借り物ではない環境保全制度としての天然記念物制度のあり方、ひいては保全法制度への提言としたいと考えており、現在、国際査読雑誌への投稿を執華中である。
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Research Products
(3 results)