2008 Fiscal Year Annual Research Report
人格主義の生命倫理の実定法化の試み-生殖補助医療技術の規制を中心に
Project/Area Number |
19530086
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
秋葉 悦子 University of Toyama, 経済学部, 教授 (20262488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
盛永 審一郎 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (30099767)
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Keywords | 人間の尊厳原則 / 人格主義生命倫理 / 着床前診断 / イタリア医師職業倫理規程 / ドイツ胚保護法 / バイオエシックス / 生殖医療技術 / 極体診断 |
Research Abstract |
秋葉は、今年度はわが国における人格主義生命倫理学の受容可能性について調査した。まず、人格主義生命倫理学の臨床実務への波及例であるイタリアの医師職業倫理規程は、医職を患者の生命と健康の奉仕者と位置づけ、医師=患者関係を「治療同盟」の協力関係において捉える。その基本姿勢は、東洋の徳の思想と親近性を持つ。また、人格主義生命倫理学の最近の文献は、その基本原則である人間の尊厳原則が「身体と精神の全体であり統一」である人間観を前提にしていることを強調している。これも、東洋の伝統的な人間観(心身一如)と共通である。近年、精神の働きをすべて脳神経に還元する身体一元論が出現しているが、人格主義の立場からは明確に斥けられており、わが国でも一般的な支持は得られていない。さらに、人格主義に立脚するカトリック社会教説は、すでに19世紀末に労働者の搾取を糾弾する公式文書の中で人間の尊厳原則を採用し、以後、他の諸宗教と連携して社会正義と世界平和の実現に貢献してきたが、同原則は、戦後、世界人権宣言にも採り入れられた。以上から、人格主義生命倫理学はわが国においても受容可能であると結論できる。 盛永は、前年度に引き続き、ドイツ医師会の「生殖医療技術への(マスター)指針」(2006年策定)の内容について、文献等を参考にしながら個々に検討を行った。特に、この指針では、着床前診断は許容し得ないが、PKD(極体診断)は許容するとされている。PKDとは、子宮に受精卵を戻す技術の精度の高まりの結果と多胎妊娠を避けるために求められた受精卵診断の技術である。精子が卵子と結合する以前は、まだ胚ではないので、胚保護法の適用を受けないから許容されるというのである。この理解は正しいのかどうか、考察した。また、選別するという点では、PKDもPIDも同じであり、この点からの検討も行った。またIVFインデックスのデーター等から読み取れることを分析した。
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Research Products
(10 results)