2008 Fiscal Year Annual Research Report
改革の後に何が起こったのか?-市町村合併の政治的・行政的効果の研究
Project/Area Number |
19530103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
真渕 勝 Kyoto University, 法学研究科, 教授 (70165934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 岐夫 学習院大学, 法学部, 教授 (80025147)
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Keywords | 中央の意図 / 府県の媒介機能 / 市町村の裁量 / 市町村合併 / 文献改革 |
Research Abstract |
20年度は(1)分析枠組みの整序(2)パイロット調査を行ことを目的とした。パイロット調査を通じて、なお体系的ではないが、明らかになったことを要約して述べたい。本研究は、国、府県、市町村という3つのレベルの政府単位が関与する諸事業の「実施」を対象とし、とりわけ、中央の地方への関与の形態とその効率性に焦点を当てる。同時に注目しなければならないのは、地方のレベルの諸アクターの政治的胴体がどのように実施に影響を及ぼすかである。このいずれの場面においても、個々の事務事業は次の3段階、すなわち、意図の決定、方針実現のための媒介活動、市町村レベルの政治活動を通じての決定と実施、という段階を経る。そして、これら各段階において、各行政主体と諸政治主体とがどのように交錯するかに注目することになる。各段階についての成果を要約すれば、以下のようになる。第一段階の「意図の決定」では、法律の内容が解釈の余地のないほど一義的であれば、「意図」の確定作業は全く不要になる。しかし、大部分の法律は、多くの曖昧な部分を残し、実施に移されるには政省令や通達を必要とする。そのために、中央の「意図」が事務事業ごとに、いかなる考慮から個別的に形成されるかを問うことは、政策が本当に予定した効果をもたらすかどうかを知るためには不可欠になる。政省令などのよって意図が明確になることもあれば、意図はある程度の曖昧さをもって地方に伝えられることもある。その際、中央がその意図をどこまで詳細に基準化して地方に伝達するか、基準の違反に対してどの程度厳しく制裁を与えるかは、政策によって異なる。第二段階の「方針実現のための媒介活動」では、中央の事務事業が市町村で実施される場合、府県は指揮監督の機能をもつか、手続き上の媒介者になることが、法律上規定されている。したがって、中央の「意図」は、府県レベルで操作される。その場合、中央の政策意図が地方で受け入れられる程度は、府県における政治的リーダーシップの所在や性格によって変化する。第三段階は、「市町村レベルの政治活動を通じての決定と実施」である。一般的な理解に反して、事務事業の実施においては、ときには市町村議会の影響力の行使があり、地元の関係団体の意向が斟酌されるのであって、実施の具体的な内容はこれらの事情、環境要因の違い、そして府県の媒介活動の仕方や方向によって、変化せざるをえない。実施は、時に中央の意図から大きくズレることがある。
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