2009 Fiscal Year Annual Research Report
改革の後に何が起こったのか?-市町村合併の政治的・行政的効果の研究
Project/Area Number |
19530103
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
真渕 勝 Kyoto University, 公共政策連携研究部, 教授 (70165934)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 岐夫 学習院大学, 法学部, 教授 (80025147)
|
Keywords | 市町村合併 / 行政の計画化 / 土地利用計画 / 農業地域におけるジレンマ |
Research Abstract |
本研究は、国、府県、 町村という3つのレベルの政府単位が関与する諸事業の「実施」を対象とし、とりわけ市町村合併が、地方レベルの諸アクターの政治的動態にどのように実施に影響を及ぼすかを調査することを目的とした。 調査のなかで明らかになった点の一つは、合併を機会にして、行政の計画化が進められることになったことである。この動きはあるいは競争から調整への動きと要約することもできる。 たとえば土地利用計画において、合併以前は、各自治体は条例ないしは指導要綱にもとついて、開発の指導にあたることが多く、その際には県の条例に依拠することが通例であった。そのために、農地転用においても、一方において、合併以前の自治体はほぼ同じ基準で処理はするが、他方において、工場の誘致などにおいては、雇用の確保のために各自治体が競争する場面が多く、結果として工場が分散してしまうことが多かった。 市町村合併はこのような状況を改善することを目的の一つに行われるのであるが、多くの場合、合併協議会においても、土地利用計画については検討されることはほとんどなく、体系的な土地利用計画の策定は合併後の宿題とされるにとどまった。そのような計画を立てる余裕がないというのが実情であったと考えられる。 体系的な土地利用計画が策定されるは合併後、しかも少なくとも5年を経てからのことである。たとえば、調査対象市の一つでは、中心地の駅前や新市役所の周辺において、土地利用が計画的になされるようになり、ミニ開発やスプロール化に一定の歯止めがかかるようになっている。 とはいえ、合併を行った自治体、とくに農村地域はジレンマを抱えている。一方で、農業を基幹産業として位置づけたいが、農家の高齢化と後継者問題によって、衰退の危機に瀕している。農業を育成・発展させる努力を引き続き行わなければならない。しかし、他方で、雇用の確保のためには一定量の工場誘致が必要であり、その労働者が住まう住宅地の確保もしなければならない。そして、合併は、このジレンマに対して特効薬ではなさそうである。強いてあげれば、無計画な宅地の増大から、計画的な宅地の増大をする仕組みが整ったということではないだろうか。
|