2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代イギリスにおける政治的賢慮概念の展開-諷刺文学の政治思想史的研究-
Project/Area Number |
19530110
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岸本 広司 Okayama University, 教育学部, 教授 (20186216)
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Keywords | 近代イギリス政治思想史 / 政治的賢慮 / オーガスタン時代 / 諷刺大学 / ジョナサン・スウィフト |
Research Abstract |
本研究は、近代イギリスの諷刺文学において政治的賢慮概念がどのような変容を遂げながら展開されたかを、17,18世紀の文人やパンフレット作家たちの作品および言説を取り上げて、歴史的コンテクストを重視しつつ政治思想史的に解明する。この目的を遂行するために、平成19年度は、まず現有の文献を利用しながら問題点を明確にした。また関係図書を購入するとともに、大学附属図書館で関連資料を収集した。 以上の準備を経たうえで、具体的に研究に着手した。イギリスで諷刺文学が隆盛したのは17世紀後半から18世紀前半のオーガスタン時代においてであるが、まずこの時代に諷刺が栄えた社会的・文化的条件を考察した。考察の内容は、政治的安定性と不安定性、自由と不自由、理性と科学的精神、ジャーナリズムの成立等々についてである。これらの検討を通して、オーガスタン期は諷刺が隆盛する格好の時代であったこと、またこの時期の諷刺作品は他の時代のものとは異なる特徴を有していたことが明らかとなった。 こうした基礎的研究の後、諷刺の概念を考察した。オーガスタン時代の諷刺論を分析しながら、諷刺とは社会的文学様式であり、その本質は、諷刺的笑いを武器にした対象の道徳的・政治的矯正に他ならなかったことを明らかにした。次いで、スウィフトのPredictions for the Year 1708, 1708; The Accomplishment of the first of Mr. Bickerstaff's Predictions, 1708; A Vindication of Isaac Bickerstaff, Esq., 1709などを取り上げ、これらテクストを丹念に読解しながら、この時代のスクリブレルス諷刺において、政治的賢慮概念がどのように展開されたかを政治思想史的に検討した。
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Research Products
(1 results)