2010 Fiscal Year Annual Research Report
官邸主導時代の審議会の研究:「小さな政府」を志向する多数派支配型の政策過程
Project/Area Number |
19530114
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
三浦 まり 上智大学, 法学部, 教授 (80365676)
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Keywords | 審議会 / 政策過程 / 小さな政府 / 規制改革 / 官邸主導 / 多数派支配型 / 合意形成型 / ジェンダー平等 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度に当たるため、主に執筆活動に専念した。 第一に、先年度から引き続き、分析結果の一部を英語で執筆した。本研究を含む形で日本の福祉国家の特徴とその変遷をアイディアの政治の観点から分析する本の執筆に昨年より着手したが、今年度は3章執筆し脱稿した。1993年に55年体制が崩壊して以降の政党政治の変化がどのように政策過程を変容させたのかに関して、1993年から2005年までと、2006年以降に分けて分析を行った。一般的には、制度改革(選挙制度改革や内閣機能強化)が政党政治のダイナミズムを変化させたと論じられる傾向にあるが、因果関係はむしろ逆であることを論証した。そして、1990年代以降に顕著になった官邸主導の政策過程の出現の持つ意味について、歴史的・比較政治的に考察した。 第二に、12月のジェンダー法学会(於:千葉大学)にて研究成果の一部を報告した。タイトルは「『女性の貧困』の政策過程:労働市場政策とジェンダー平等政策の交錯」であり、ジェンダー平等政策が新自由主義と親和性を持つ形で進められ、その結果として女性の貧困がもたらされたことを論じた。 第三に、ジェンダー法学会での報告をもとに論文を執筆し、ジェンダー法学会の学会誌『ジェンダーと法』8号に寄稿した(刊行は平成23年度予定)。タイトルは「労働政治の方向転換における政治主導と審議会:ジェンダー・バイアスは乗り越えられるか?」であり、労働政策の方向転換が政治主導によってなされた点に着目し,そのダイナミズムを明らかにするとともに,女性の貧困阻止の観点からはどこに壁があるのかを検討した。多数派支配型の政策過程と合意形成型の政策過程の相違と緊張関係に焦点を当てつつ、そのどちらも別の形のジェンダー・バイアスが埋め込まれている点を指摘した。
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