2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化の下での韓国の地域社会の変容に関する研究
Project/Area Number |
19530121
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
文 京洙 Ritsumeikan University, 国際関係学部, 教授 (70230026)
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Keywords | 韓国 / コミュニティ / グローバリゼーション / 比較 / 住民自治 / 済州島 / 市民事業 / まちづくり |
Research Abstract |
本研究は、1990年代の済州道をはじとする韓国における地域社会の変容を、日本の地域社会のその間の変化とも対比しつつ、“公共圏"という観点から調査・分析することを目的としている。平成20年度においても19年度に引き続き、済州道をはじめとする韓国での地方自治や住民参加についての資料蒐集、インタビューなどをおこなった。こうした調査の結果、1997-98年の金融通貨危機以降の韓国社会の変化と10年に及ぶ金大中・盧武鉱の両市民派政権の社会政策を背景に、社会的再生産を担う権力システムと市場システム、この二つのシステムに対してセンサーの役割を担う市民社会という三つの領域の関係に重大な変化がみられることが明らかになった。 市民派政権の登場とグローバル化の下での格差社会の深まりの中で市民社会の市場や行政に対するセンサーとしての役割が後退し、市場原理主義の猛威に対する市民社会の自己防衛が、経済システムの内部に公共的なもの、社会的ものを意識的に埋め込んでいく試みとして具体化されつつあることが明らかになった。この傾向は、イギリス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国さらに日本とも共通する現象であり、行政や企業との協力を前提とした市民事業(社会的企業、コミュニティ・ビジネス、マイクロファイナンス、ソーシャルベンチャーなど)の各地での展開として表れている。こうした研究結果は本年7月刊行予定の川瀬俊治との共編『韓国社会はどこに向かっているか』(東方出版)によって明らかにするとともに、平成21年度以降に取り組む研究として新たに採択された韓国における市民的公共性の新たな展開としての市民事業に関する研究」(基盤研究℃)において引き続き深めていく予定である。
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