2009 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト・ガバナンスの台頭-市民社会、企業、そして国際組織による秩序の模索-
Project/Area Number |
19530131
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山田 高敬 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 教授 (00247602)
|
Keywords | グローバル・ガバナンス / プライベート・ガバナンス / 国際制度 / 国際組織 / 森林管理協議会(FSC) / EU排出量取引制度(EU ETS / マルチ・ステークホルダー・アプローチ |
Research Abstract |
本研究の目的は、官民パートナーシップに代表されるソフト・ガバナンスの特徴を明らかにし、特定の事例についてソフト・ガバナンスが採用されるに至った理由および、ソフト・ガバナンスの有効性と正統性について国際制度論の視点から分析することにあった。その目的を達成すべく、平成21年度は、主に森林管理協議会(FSC)およびEU排出量取引制度(EU-ETA)に関する聞き取り調査を実施した。 以下に、それぞれに関して調査結果を簡単に要約する。FSCは、純粋な私的な制度であり、森林の違法伐採に各国政府が歯止めをかけられなかったことなどがその設立の理由となった。FSCの最大の目的は、森林管理に関するグローバルな標準を設定し、その遵守を、独立認証機関を通して認証することにある。標準の設定には、マルチ・ステークホルダー・アプローチが採用され、セクター間の討議の機会が確保されている。森林管理に関しては、それと競合する森林認証支援プログラム(PEFC)などが存在するが、FSCの基準の方がより包括的であり、2000年以降、FSCに参加するセクターの数は増え続けている。その意味では、FSCは、正統性を確保しながら、社会統制の担い手として有効に機能していると言える。 EU-ETSに関しては、ポスト京都議定書のグローバルな枠組みとの関係について関係者から聞き取りを行った。グローバルな制度的な枠組みを構築する中で、EUは、コペンハーゲン会議において「セクター別クレジット供与」の仕組みを提案した。そのねらいは、新興諸国にも排出量取引への参加を促し、それによって域外企業との競争条件をより公正なものにし、EU-ETSの正統性を確保することにあった。この仕組みがもし他国にも受け入れられるのならば、今後政府間のレジームが成立しなくても、EU-ETSがそれに代る制度として有効に機能する可能性があることを確認できた。
|
Research Products
(4 results)