2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530132
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 誠 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (60257813)
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Keywords | 権力 / 国家 / グローバリゼーション / 脱領域化 / 暴力 / 人道的介入 |
Research Abstract |
グローバリゼーションを政治の面から考察すると、そこには領域国家に封入されてきた政治権力が国境を越えて作用する現象の発露と見なすことができる。ここまでは、かつての1年の研究で得られた知見であり、そこに権力領域化と脱領域化の相克、コンテナーとしての国家の変容といった概念装置を用いた理論の精緻化が進んでいた。 2008年度は、これが、かつての帝国とどのように異なっているのかを、グローバル・ガバナンスやトランスナショナリズムといったリベラルな理論装置からではなく、暴力に注目して抽出する作業を進めた。したがって、リベラル・デモクラシーやネオリベラリズムというイデオロギーが暴力を行使する論理を描く試みを進めた。グローバリゼーションが、さまざまなメカニズムやイデオロギーを内包しつつ、公的にはリベラリズム(さらにいえば経済的ネオリベラリズム)を重要なモチーフにして進んでいるため、それに注目する必要があるのである。2008年度に行った3つの会議での報告はこれらの研究実績であり、そのうち1つには報告ペーパーが伴っている。従来、暴力はリベラリズム、経済的ネオリベラリズム、あるいはリベラル・デモクラシーの外部のものとして考えられてきたが、これが内部のものであることが指摘できた。人道的介入と呼ばれるものを精査すると、そこには市場のロジック、ネオリベラル国家の移植といった側面がみられることがわかる。人道的介入はリベラルな(さらいえば経済的ネオリベラリズムの)暴力としてとらえるべきであり、そこに今日のグローバリゼーションの性質がよく表れているといえる。
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