2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530132
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 誠 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (60257813)
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Keywords | 権力 / 国家 / 領域 / グローバリゼーション / 暴力 / コスモポリタニズム |
Research Abstract |
権力は、モダンの世界においては領域国家というコンテナーの内部で構成されてきた。国家外に権力を作動することは、国際関係において珍しいことではないが、それは外交関係や戦争という制度を通じる以外では、正当なことではない。主権の原則に反する帝国主義であり、特に第二次世界大戦後はその不当性、非合法性が広く認識されるようになった。新帝国主義として、行政的・政治的領有のない場合でも、国外に権力を及ぼすことは十分に今なおありうるとしても、それは程度と正統性からすれば、国内における国家の権力の強さ、制度化の程度とは比べものにならないほど低い。グローバリゼーションはこのシステムを溶解したのではなく、国家が国内と国内の結束という構造を持つことを明らかにした。そこで今後求められるのは、コスモポリタニズムの考察であろう。 以上の知見を、国際と国内の分節の変容として捉えることができたのが、大きな研究の意義である。理論的には、当初の研究目的をほぼ満たしたと言える。実証的研究は今後に課題を残したと言うべきであるが、「暴力のグローバリゼーションを超えて」、片岡幸彦他編『グローバル世紀への挑戦 文明再生の智慧』(文理閣、2010年)、123~133頁という研究図書に研究成果を出したことは書いておきたい。
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