2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530138
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池上 佳助 Tokai University, 文学部, 准教授 (40307294)
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Keywords | 国際関係史 / 冷戦史 / 米国-北欧関係 / 北極圏地域研究 / 基地問題 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
1.本年度は「ノルウェー基地政策の形成とその要因」を課題に、第二次大戦後から1949年のNATO加盟に至るノルウェーの外交・安全保障政策の変容を対ソ連関係を視点から実証的に分析することにあった。このため2010年3月、ノルウェー国立公文書館および外務省公文書室において外交文書の調査を実施した。ノルウェーは戦後、従来の中立政策から西側軍事同盟参加へと大きく舵を切り、北大西洋条約加盟の交渉に着手したが、これに反発したソ連はノルウェーに不可侵条約を提案するなど揺さ振りをかけてきた。ノルウェー政府および与党労働党内で対応策が検討され、最終的に西側軍事同盟への参加は堅持しつつ、ソ連に対する信頼醸成措置として「平時においては外国軍の駐留を認めない」との基地政策を決定した。これまで基地政策、とりわけソ連政府との交渉に関わる「極秘」文書は非公開となっており、一部のノルウェー人研究者を除き閲覧は認められていなかったが、従来より研究支援を得ている国防研究所の推薦状もあり、外務省より同文書へのアクセスが特別に許可された。今後、今回入手した文書をソ連側および米国側史料とも照らし合わせながら、ソ連の不可侵条約提案など「平和攻勢」の意図がどこにあったのか、軍事同盟にとって大きな制約となるノルウェーの基地政策をなぜ米国政府は容認したのか等について分析していく。 2.オスロでは、対ソ連関係史の専門家であるホルツマルク国防研究所主任研究員と面談し、ソ連での史料、とりわけスターリン文書やロシア外務省文書の開示状況、北欧内における冷戦史研究の動向等を聴取した。また、現在国防研究所が主幹を務め、ロシア、米国、北欧諸国などの国際問題研究所が参加する国際共同研究プロジェクト「Geopolitics in the High North」に関する概要、同研究員が所属する同プロジェクト歴史分科会での論点などについて説明および資料の提供を受けた。「High North」という地域概念は未だ学術的な定義が確立していないとのことであったが、本研究課題の中で取り上げる「北極圏地域」とほとんど重なり合っており、同地域が両大戦期、冷戦期、冷戦後にそれぞれ政治的、軍事的、経済的、文化的にどう位置づけられていたのかというこの国際共同研究は大いに参考となるものであった。最終報告書は2012年末ということであったが、今後のプロジェクト進捗状況などの情報を随時提供する旨約してくれた。
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