2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530138
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池上 佳助 東海大学, 文学部, 准教授 (40307294)
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Keywords | 国際関係史 / 冷戦史 / 米国-北欧関係 / 北極圏地域研究 / 基地問題 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
1. 本年度は本件研究課題の最終年度であり、年度全般にわたり研究の総括としてこれまで入手してきた北欧各国や米国の国立公文書館の史料の読解・整理と研究ノートの作成に多くの時間を費やした。昨年度、ノルウェー基地政策の形成に大きく関わることになったソ連政府との極秘交渉記録はなんとか入手できたものの、基地政策と表裏の関係になる非核政策に関しては、核の運用などに関する米国やNATO側史料に未だ非公開のものが多く、非核政策の実効性について十分な検証はできていないが、近く論文に発表する予定である。 2. 一方、昨年度のオスロでの調査で紹介されたノルウェー、ロシア、米国等の研究機関による国際共同研究プロジェクト「Geopolitics in the High North」に関して、9月に北部ノルウェーのボードー、トロンハイムに出張し、同プロジェクト歴史研究グループの研究者との間で意見交換を行った。ボードーにある航空博物館では近年、ナチス占領下の第二次大戦末期にソ連軍により解放され、冷戦期にソ連が軍事的関心を抱き続けた北部ノルウェーの戦略的位置づけについて再検証する「冷戦史シンポジウム」が開催されており、クレーベ主任研究員よりその目的・成果などにつき説明を受け、同館所蔵史料およびシンポジウム報告書を入手した。トロンハイムでは、ナチスの戦争捕虜収容所であったファルスタッド研究所を訪問し、ソーレイム主任研究員と懇談し、ナチスによるソ連軍兵士虐待・殺害、ソ連による北部ノルウェーの解放など大戦期から冷戦初期のノルウェー・ソ連関係について意見交換を行った。 3. 2011年は日本のマスコミにおいてノルウェー外交が注目を集めた。北方領土問題や尖閣諸島問題で日本の民主党政権による外交の稚拙さが批判されるなかで、ノルウェーは旧ソ連・ロシアとの間で長年未解決であったバレンツ海境界線画定問題で合意をみたことやノルウェー・ノーベル委員会が中国政府の圧力にもかかわらず平和賞を反体制派活動家に授与したことで注目され、マスコミからインタヴューや番組出演などの依頼が多数寄せられた。全くの副次的な成果ではあるが、ノルウェーの第二次大戦・冷戦期の歴史的経験などを改めて整理し、「小国」ノルウェーの外交基本姿勢、とりわけドイツ、ソ連、米国との関係について解説する機会を得た。
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