2007 Fiscal Year Annual Research Report
教育制度と金融市場の不完全性が経済成長及び所得格差に与える影響に関する理論的研究
Project/Area Number |
19530152
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 保 Kobe University, 経済学研究科, 教授 (00237413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 博之 大分大学, 経済学部, 教授 (10264326)
安岡 匡也 神戸大学, 経済学研究科, COE研究員 (90437434)
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Keywords | 所得格差 / 経済成長 / 教育制度 |
Research Abstract |
Glomm and Ravikmar(1992)のモデルに教育効果に関する外部性を導入したマクロ動学モデルを用いて、教育制度と経済成長及び所得格差の関係について理論的な分析を行った。教育の外部効果を考慮していないGlomm and Ravikmarモデルでは、経済が成長する限り、私的教育及び公的教育のいずれの教育制度において所得格差は必ず拡大する。しかし、教育に正の外部効果があれば、それがあまり大きくなくても、私的教育下あるいは公的教育下のいずれにおいても所得格差が縮小しながら経済が成長する経路があることを示した。また、そのような経路が存在するための教育の直接効果と外部効果の関係についても明らかにした。 また、教育の外部性については同じ世代の中で発生するものだけではなく、世代を越えた外部性も重要な役割を果たす。この点を考慮した動学モデルを構築し、特に所得格差の縮小が経済成長に与える効果が私的教育制度下と公的教育制度下でどのように異なるかに焦点を当てて分析を行った。その結果、公的教育制度の下では人口成長及び教育の世代間を越えた外部効果が経済成長に大きな影響を与えるに対して、私的教育制度下ではそれらが重要な役割を果たさないことが示された。これらの結果は今後の教育政策のあり方を考える上で重要である。 教育としては学校教育だけでなく企業内における教育及び訓練も重要である。企業内の教育・訓練は学校教育と代替関係にあると考えて、マクロ動学分析を行い、学校教育水準の低下が企業の人的資本投資のための費用の増大を招き、結果として非正規雇用者が増加し、非正規雇用者と正規雇用者の間の賃金格差を拡大させる可能性があることを示した。これは今後の非正規雇用者の問題を考えるための新しい試みである。
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