2007 Fiscal Year Annual Research Report
離散型不確実性に直面する資源経済の持続可能性に関する理論分析
Project/Area Number |
19530153
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 博史 Kobe University, 国際協力研究科, 教授(理事) (50118006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 誠一 愛知学院大学, 商学部, 教授 (70047489)
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Keywords | sustainability(持続可能性) / resource economy(資源経済) / 確率的変動 / 経済的破滅確率 / 国際的公共資源 |
Research Abstract |
国際的共通資源(例えば公海漁業資源や清浄で温度変化のない大気環境)を利用し、私的資本と組み合わせて生産活動を行っているような経済を考える。個人は、生産活動の成果の一部を消費し、残りを資本蓄積にまわす。また、共通資源の存在量は、再生可能でない。しかし、その利用・採掘活動の時間的経過の中では、突然に全存在量が増減することがありえる。(例えば、技術進歩の結果、埋蔵量の新たな発見や(資源存在量が増加)、採掘中断事故等が考えられる。)このような時間的な変動過程を想定すると、経済活動の持続可能性が基本的に共通資源に依存しているような場合、はたしてそのような経済社会は存続できるのか。もし、将来にわたり存続できるとすれば、その条件はいかなるのものであるかを分析する必要がある。 この問題を議論するために、できるだけ現実に近い仮想経済を想定した。当該研究の新規性は、共通資源の存在量が時間経過とともに確率的に変動するということを分析的にどう処理するかという点にある。すなわち、経済社会がこれから将来時点でどの確率で存続の危機に直面するかを明示することである。持続可能確率を、このような問題の中で明示したものは、我々の知る限り他に存在しない。数学的な確率処理が出来るように、Levy確率過程を利用している。 まず、得られた重要な結果は次のようなものである。共通資源は再生不可能であるが、利用の過程で確率的な増減変動を伴う。当然ながらその変動の頻度と変動量の振幅は大きくないほど、また共通資源の利用可能量が大きいほど、当該資源の依存度の最適限度が小さいほど、経済が破滅限界に遭遇する確率は小さくなってゆく。(いずれの結果も、破滅確率を計算した上で導出できる命題である。) 次に経済体制のあり方が、その社会の存続にどのようにかかわるかを分析した。経済活動を協調するべきか。あるいは協調を考えないで自己目的を追求するような社会が持続可能性を高めるのか。分析の結果、協調社会の持続確率の方が高くなることが示された。(例えば地球温暖化問題における京都議定書のような世界的協調の意義の理論的基礎を提供したことになる。)
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