2008 Fiscal Year Annual Research Report
複雑適応系としての市場経済のダイナミクスに関する基礎的研究
Project/Area Number |
19530155
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
小野崎 保 Aomori Public College, 経営経済学部, 教授 (10233595)
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Keywords | 独占・寡占 / 強化学習 / 複雑適応系 / エージェントベース・モデル / シミュレーション |
Research Abstract |
本年度は,モデルの分析を深化させシミュレーション結果の解析を改良した,その結果を学会で報告し,論文としてまとめた。具体的に進展した点は以下の通りである。 (1)モデルの基本的なダイナミクスをベクトル場で表現した。これにより,限定合理的な企業がどのような学習過程を経て,より高い利潤を追求していくかを確認することができるようになった。 (2)モデルがその特殊ケースとして新古典派の均衡(完全競争均衡およびクールノー均衡)を含むことを示した。これにより,本研究のモデルが決して特殊なものではなく,むしろ,新古典派モデルに主体の限定合理性および学習過程を組み込んだ拡張版となっていることを明示することができた。 (3)シミュレーション結果を使って価格の分散を計算することにより,寡占が発生しているときに企業間の価格のバラツキが最も少なくなることを解明した。 (4)学習行動の結果,企業は自らが直面する需要曲線をかなりの程度知ることができることが分かった。これにより,導入した学習過程が適切に機能していることを確認することができた。しかしながら,このことは当初から合理的な主体を想定することを正当化するわけではない。本研究のモデルでは主体の学習過程に於いてまさに寡占が発生するのであり,学習の結果を当初から想定すれば(2)で示されたとおり,モデルの定常状態は新古典派均衡と同じになる。 (5)その他,これまでに得られている解析結果の精度を高めた。 なお,論文は現在Physica Aという物理系の雑誌に投稿中である。
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Research Products
(5 results)